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Dr’s BLOG / 先生のブログ一覧

2024-04-24

老化治療薬としてのメトホルミン

フレンチライラック、メトホルミン

みなさんこんにちは。BIANCAクリニック 美容内科指導医の前田陽子です。

皆さんはメトホルミンというお薬をご存知ですか? もともとは血糖値を下げる2型糖尿病の治療薬ですが、その作用機序が老化プロセスに関与する経路を標的とすることから、老化治療の分野でも大きな期待が寄せられています。

 

メトホルミンは、17世紀にフレンチライラック(↑の写真のお花です)の根が、糖尿病の症状を緩和することから発見され、開発されました。

それ以降、1990年代に2型糖尿病治療薬として承認されてから、血糖値を下げる作用があるため、糖尿病管理の定番薬となっています。

 

TAME試験

メトホルミンの老化治療に関する臨床試験に、TAME試験という有名な研究があります。

TAMEは Targeting Aging with Metformin の略で、「メトホルミンで老化をターゲットにする」、老化を治療する という意味で、Nir Barzilai博士が率いました。

3000人以上の患者さんを対象として行われた画期的な試験で、メトホルミンのメカニズムが老化のプロセスに関与する重要な生物学的経路に影響を及ぼすことから、ヒトの老化関連疾患を遅らせる効果があるのでは、メトホルミンは強力な老化予防薬となる可能性があるのでは、と期待されています。

 

メトホルミンの長寿関連生物学的経路への影響

メトホルミンの老化治療としての効果には、いくつかの老化経路が関わっています。

まず、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)は、細胞のエネルギーの恒常性の維持に重要な役割を果たしていますが、メトホルミンの濃度が 1mM以上で、ミトコンドリア呼吸複合体1を阻害することにより、細胞内のAMP/ADP:ATPバランスを変化させ、間接的にAMPKを活性化させることができます。これにより、メトホルミンは脂肪生成酵素活性を抑制し、代謝を改善することができます(Burkewitz et al.)。

 

つぎに、フォークヘッドボックスO(FOXO)タンパク質という、細胞を酸化ストレスから守り、DNA修復を促進する転写因子があります。メトホルミンはFOXOタンパク質の活性に影響を与えることがわかっており、長寿経路との関連性が知られています。

マウスの実験ではありますが、メトホルミンは、cAMPのレベルに応答する重要なシグナル伝達分子であるプロテインキナーゼA(PKA)から、FOXO1シグナル伝達経路を阻害することで、グルカゴン誘導肝グルコース産生を抑制することが明らかになっています(Guoら、2021年)。

 

さらにメトホルミンは、酸化ストレスの抑制とテロメア転写の制御との関連によって、老化のもう一つの特徴であるテロメア短縮をも遅らせる可能性があります。

メトホルミンはAMPKを介してエンドヌクレアーゼRAG1を活性化し、テロメラーゼ活性化につながるDNAの分裂と転位を促進します(Finley, 2018)。

さらにメトホルミンはSIRT1を介してテロメア転写を活性化し、慢性炎症から細胞を保護するため(Palacios et al.)、SIRT1は二重目的の薬物標的となる可能性があります(Olsenら、2023)。ランダム化比較試験においても、メトホルミン治療を受けた糖尿病前症患者のテロメア長は、プラセボ群よりも有意に長かったという結果が出ています(Vigili de Kreutzenberg et al.)。

 

次に、TET酵素を介したDNAの脱メチル化は、遺伝子修復の促進とゲノムの完全性の向上に関連しています。メトホルミンは、AMPKを介したTET2のリン酸化を活性化することにより、TET2の安定性を高めることができることも知られています(Wu et al.)。

 

 

長寿医療におけるメトホルミン

糖尿病治療薬としてのメトホルミンの有効性は確立されていますが、長寿を目的とした最適な投与量についてはまだはっきりわかっているわけではありません。

Geroprotectors.orgやその他のデータベースでは、メトホルミンは潜在的な老化予防薬として分類されており、老化関連の研究におけるメトホルミンの有望性が強調されています。

このような科学の裏付けと、老化治療の一般化という背景から、健康寿命を延ばそうとする人々の間でメトホルミンを使用する傾向が高まっています。

 

 

まえだ

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