表情じわをボトックスでストップ、この時期脇汗止めにも。
こんにちは、本日はボトックスについてご紹介したいと思います。
皮膚科専門医の葉山愛弥です。
ボトックスとは
ボトックスあるいはボツリヌス菌という言葉を耳にしたことはありますか?
ボツリヌス菌は土壌や沼、湖などに広く生息する嫌気性菌(空気がないところで増殖する菌)です。
身近なもので言えば、『1歳未満にハチミツを食べさせてはいけない。』というのは、ハチミツにボツリヌス菌の芽胞が含まれていることがあります。乳児の未熟な腸内で発芽し、ボツリヌス毒素(ボツリヌストキシン)というタンパク質が生じると、乳児ボツリヌス症を来す可能性があるからです。ちなみに1歳以上の腸では代謝されるため問題ありません。
つまり、このボツリヌス毒素は、筋肉と神経の結合部に注射することにより、一時的に筋肉の動きを麻痺させたり、筋肉の動きに関与している神経伝達物質(アセチルコリン)の分泌を抑制することで、筋肉の緊張を和らげる作用があります。
ここまで読むと少し怖い薬にも聞こえますが、神経内科では、痙攣や斜頸などの疾患に対して、筋肉が緊張した状態を和らげる保険治療として使用しており、日本でも1996年に厚生労働省による認可を受けた安全性が確立された治療薬なのです。
美容医療でのボトックス注射
美容医療でもこのボトックス注射を用いて、筋肉の動きを麻痺させたり、緊張を緩和させることで、年齢とともに刻まれる表情じわの改善や予防、エラに注入することにより歯ぎしりなどの歯科トラブルを回避するとともに、小顔効果を作り出すことができます。また、脇などに注射することで汗を止めてくれるため、この時期には必須治療となっている方もいるくらいです。
なお、美容医療に関してのボトックス注射は、1989年にアメリカで認可されたのが始まりで、現在はイギリスを含む80ヵ国以上において承認されており、日本でも2009年には厚生労働省より美容目的での使用の承認がおりています。
現在では韓国製のものや、頻回な注入により生成されるボツリヌス毒素への抗体ができにくい、コアトックスという薬剤も登場しています。
ボトックス注射の効果、症例
ボトックス注射は、美容医療の中では注射で簡単に処置ができ、その1回の効果は2週間~1か月後をピークに、通常3~4か月持続、毒素の代謝をもって効果が消えることから、良くも悪くも可逆性の治療のため、「メスを使った外科手術は抵抗がある」「美容医療が初めて」という方でも、ボトックス注射はとても挑戦のしやすい施術です。
特に下記の部位への治療が人気です。
・額や眉間、⽬尻、目の下、バニーライン(目と目の間のしわ)の表情じわの軽減
・口周り、あごなどにできる表情じわの軽減
・食いしばりによるエラのボリュームダウン
頬がこけやすい方は外側のみに打つのがおすすめ
・口角の引き上げ
・ガミースマイル(笑った時に通常よりも歯茎が見える状態のこと)の改善
・ふくらはぎや腕などの部分痩せ
・鎖骨やデコルテラインの形成
・多汗症やワキガの治療
・過剰な皮脂分泌の抑制 など
なお、ボトックス注射は、ドクターの技術と経験値で仕上がりに差が出る繊細な治療です。
筋肉の付き方や動きは十人十色であり、同じ量を同じ打ち方で注入しても効果の程度は異なります。
万が一、注入量や注入部位を誤ってしまうと、顔がこわばって目元や顔全体の表情が不自然な見た目になってしまいます。
また、患者様にとってボトックス注射が適切な治療であるのかの見極めも肝心です。
額のしわに悩まれている患者様で瞼のたるみや眼瞼下垂が見られる場合、ボトックス注射を打つと瞼が重くなり頭痛や肩こりを引き起こすケースもあるため、丁寧に診察することが重要です。
継続的にボトックス注射をされる場合には、初回施術から定期メンテナンスまで、同じドクターが担当させていただきますので、ご安心してお試しください。気になる箇所がある場合にも、次回以降も同じドクターに依頼していただくことで、個々の患者様の特性をわかった上で、単位数や注射部位を見極められるためより良い結果が得られると考えます。
ここで皮膚科専門医の私個人のつぶやき・・・
暑い温度でボツリヌス菌毒素は壊れてしまうため、当日の運動やサウナ、長風呂等、体が温かくなることは避けましょう。
3か月は間隔を開けて施術をした方が抗体ができないと言われているため、一部位ずつ追加してみたい気持ちもわかりますが、個人的には表情じわが刻まれる前に、額、眉間、眼回り、バニーライン、頤にはまとめてボトックス注射をしています。
また、最近拝読した本*によると、亜鉛欠乏の方は効果が出にくいようです。
(円形脱毛症の方などで採血すると、脱毛原因には至らなくても欠乏気味の人が多いのは事実。)
5-7日前からサプリメントの摂取がおすすめ。
また、効かせたい部分は注射後に動かすとより効果がでるそうです。
*『BTx TUNING:ボツリヌストキシンによる表情筋調』 著者:西田 美穂 西田 真
BTx TUNING:ボツリヌストキシンによる表情筋調律 | 克誠堂出版