コラム
2026.09.21
「筋肉増強剤」とひとくくりにしていいのか──選ぶ前に知っておきたいこと
美しさを最大限に引き出すには、外側だけでなく内側のケアが欠かせません。海外では一般的なペプチド療法など先進的なエイジングケアを、日本の患者様にも届けたいと考えています。美容内科的アプローチは即効性こそ控えめですが、美と若さを支える土台づくりの要。栄養療法や生活習慣改善に加え、ホルモン補充・ペプチド療法・再生医療を組み合わせ、一人ひとりに適した治療計画を提案。内側からの健康と美しさを長期的にサポートしていきます。

「筋肉増強剤」で検索すると、アナボリックステロイドの話も、SARMの話も、ペプチドの話も、同じ土俵で語られていることに気づきます。
名前は知っていても、それぞれがどれくらい体に負担をかけるのかは、正直よく分からない──そんな状態でこのページにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
先にお伝えすると、「筋肉増強剤」という一つの言葉でくくられている成分たちは、実は健康への影響の大きさがかなり違います。
同じ棚に並んでいるように見えて、中身はまったく別物なのです。
この記事では、なぜこれほど評価が分かれるのか、そしてBIANCAクリニックがどのような考え方で選択肢を絞っているのかを、順を追ってお話しします。
【Doctor’s Point】
筋肉増強剤について相談を受けるとき、実は「何を使うか」より先に、「なぜアナボリックステロイドは避けているのか」を聞かれることが多いんですよね。
教科書的には、ステロイドは肝機能・心血管系・ホルモンバランス・精神面と、影響が及ぶ範囲の広さが問題とされています。
ただ現場の感覚としては、それ以上に「一度崩れたホルモンバランスが、思ったより長く尾を引く」というケースを見てきたことが、当院で扱わないという判断の一番の理由になっています。
効率よりも、あとに残るものを大事にしたいと思っています。
なぜ、同じ「増強剤」なのに評価がここまで違うのか
アナボリックステロイドは、男性ホルモンそのものに近い作用を持つ成分です。
効果の強さはよく知られていますが、その分、体のあちこちに影響が及びやすく、報告されている副作用の種類も多岐にわたります。
肝機能への負担、心血管系への影響、ホルモンバランスの乱れ、気分の変動など、影響範囲の広さそのものがリスクの大きさに直結していると考えられています。
一方、SARM(サーム)と呼ばれる化合物や、成長ホルモンの分泌を促すタイプのペプチドは、より限定的な範囲に作用するよう設計された経緯を持つ成分です。
「筋肉や骨など、狙った部分だけに働きかけたい」という発想から生まれてきた、いわば次の世代の選択肢と言えます。
ただし、ここで一つ、誤解しておきたくないことがあります。
SARMやペプチドは「ステロイドより安全」と語られがちですが、これは半分正しく、半分言い過ぎです。
設計上の狙いが限定的であることと、実際に安全性が確立していることは、まったく別の話だからです。
これらもまた国内外で正式に承認された医薬品ではなく、長期的な安全性データが十分に蓄積されているとは言えません。
「ステロイドほどではない」ことと、「安全である」ことの間には、まだ距離があると考えておくのが実情に近いと思います。
BIANCAクリニックが、アナボリックステロイドを選ばない理由
BIANCAクリニックでは、健康を第一に考える方針のもと、アナボリックステロイドは取り扱っておりません。
理由は単純で、報告されている副作用の種類の多さと重さを踏まえた、健康を優先する考え方によるものです。
一時の効果より、その方のその後の体調に無理のない形で目標に近づいていくことを大切にしています。
その代わりに提供しているのが、LGD-4033、イパモレリン、テサモレリンという3つの成分です。
LGD-4033はSARMに分類される成分で、筋肉に選択的に作用することを目指して研究が進められてきましたが、国内外で未承認の成分であり、肝機能への影響が報告された症例も存在します。
イパモレリンは成長ホルモンの分泌を促すタイプのペプチドで、同種の成分の中では比較的作用が穏やかとされていますが、長期使用に関するデータはまだ十分とは言えません。
テサモレリンは、海外ではHIV感染に伴う脂肪分布異常という特定の疾患に対して承認された実績を持つ成分ですが、筋肉量や体組成の変化を目的とした使用は、その承認の範囲を超えたものになります。
いずれの成分も国内では未承認であり、自由診療としての取り扱いです。
入手経路や海外での安全性情報、国内で承認されている類似薬の有無については、カウンセリングの中で詳しくご説明しています。
数字や成分名だけで判断するのではなく、ご自身の体質や持病と照らし合わせながら、対話を通じて検討していただきたいと思っています。
正直なところ、こうした成分を扱う医師としても、「絶対に安全です」とは言えない領域です。
だからこそ、定期的な血液検査などで体の状態を確認しながら進める、という付き合い方が欠かせないと考えています。
効果を求める前に、心にとめておきたいこと
トレーニングの効果を高めたい、体を大きくしたいという気持ちは自然なものです。
ただ、こうした成分は、トレーニングという土台があってはじめて意味を持つものであり、成分単体が筋肉を作ってくれるわけではありません。
また、効果の出方や体への影響には個人差があり、「これを使えば必ず結果が出る」と言い切れるものでもありません。
肝機能や心臓に持病がある方、ホルモンバランスに関わる治療を受けている方、妊娠を考えている方などは、開始前により慎重な相談が必要です。
逆に、すでにトレーニングを継続していて、アナボリックステロイドほどのリスクは負いたくないと考えている方にとっては、こうした選択肢が検討材料の一つになり得ます。
「未承認の成分だからステロイドより安全なはず」という思い込みだけで選ぶのではなく、成分ごとに報告されているリスクを理解したうえで判断していただければと思います。
よくある質問
ここまで読んで、それでも気になる点は残っているかもしれません。よく聞かれる質問にいくつかお答えしておきます。
アナボリックステロイドより安全ですか?
報告されているリスクの種類は少ないとされていますが、未承認の成分である以上、安全性が確立しているとは言えません。「より安全」ではなく「別の種類のリスクがある」と捉えていただく方が実情に近いです。
保険は使えますか?
自由診療となるため、公的医療保険の対象外です。
トレーニングをしなくても効果はありますか?
これらの成分はトレーニングと組み合わせて使われることが前提です。成分単体での効果を保証するものではありません。
どのくらいの期間で変化を感じますか?
体質やトレーニング内容によって差が大きく、一律にお伝えできるものではありません。
気になる方は、まず話を聞かせてください
筋肉増強剤という言葉の中に、これほど幅のある選択肢が混在していることは、意外と知られていません。
だからこそ、名前や噂だけで判断するのではなく、それぞれの成分がどのような位置づけにあるのかを理解したうえで、ご自身に合うかどうかを考えていただきたいと思います。
BIANCAクリニックでは、健康を第一に考えたうえで、LGD-4033・イパモレリン・テサモレリンについてのご相談を承っています。
「アナボリックステロイドは避けたいけれど、他の選択肢を知りたい」という段階でも構いませんので、気になる方は一度相談してみてください。
体づくりに近道を求めたくなる気持ちは、よく分かります。ただ、遠回りに見えても、体の状態を確認しながら進める方が、結局は長く付き合えるやり方だと思います。
分からないことは遠慮なく診察でお尋ねください。一緒に、無理のないペースを見つけていきましょう。