脱毛を予防する頭皮のスキンケア
脱毛を予防するためにできることはないか?
そんなテーマでTBS、Nスタ様からご依頼がありましたので、延長で書かせていただきます。
皮膚科専門医の葉山愛弥です。
将来脱毛しないために知っておきたい頭皮スキンケア習慣について
多くの人が肌のスキンケアには時間をかけても、頭皮のケアには無頓着です。しかし、髪は頭皮に存在する毛包から生えており、その毛包は血流や皮脂バランス、紫外線ダメージなど頭皮環境に大きな影響を受けます。毛包の働きが弱まれば髪は細くなり、抜け毛が増え、将来的な薄毛につながります。つまり、髪を守るためには頭皮を「顔と同じ皮膚」と考え、毎日のケアを習慣化することが重要です。
20代のうちは髪が太くしっかりしており、薄毛の自覚はほとんどありません。しかし、この時期の不規則な生活や過剰なカラーリング、睡眠不足などが、将来の毛包の老化を早める要因になります。特に毛母細胞は夜間に分泌される成長ホルモンの影響を強く受けるため、夜更かしは髪の成長サイクルを乱す大きなリスクです。
30代に入ると仕事や家庭のストレスが増え、皮脂分泌の変化やホルモンバランスの揺らぎによって抜け毛が目立つ人も出てきます。男性では男性ホルモン由来のAGAが始まるケースがあり、女性では産後脱毛など一時的な脱毛が起こりやすくなります。この時期からは紫外線対策や頭皮マッサージなどの予防的ケアが効果的です。
40代以降は毛包の数自体が減少し始め、毛が細くなる傾向が顕著になります。女性はエストロゲンの減少により髪のハリやコシが失われ、男性では進行性の薄毛がはっきりしてくる時期です。この段階では頭皮の乾燥やフケも増えやすくなるため、保湿ケアが必須となります。さらに抜け毛の増加を感じたら早めに、ミノキシジル外用や生活習慣の改善を取り入れることが望ましいでしょう。
50代以降では白髪染めによる薬剤刺激が頭皮トラブルを悪化させることもあり、低刺激のヘアケア製品を選ぶことが推奨されます。また、加齢に伴う血流低下や酸化ストレスが毛包の活動性を抑えるため、頭皮の保湿や抗酸化成分を含む食事・サプリメントを組み合わせることも有効です。
日々のルーティンとしては、朝は頭皮用UVスプレーを髪の分け目や頭頂部に使用し、軽くマッサージを行うことで血流を促すのがよいでしょう。夜は38度前後のぬるま湯で頭皮を予洗いし、低刺激のシャンプーで指の腹を使ってやさしく洗います。洗髪後は必ずドライヤーで頭皮をしっかり乾かし、頭皮ローションや育毛トニックを塗布して軽くマッサージします。週に1〜2回は頭皮用スクラブやクレンジングジェルで毛穴汚れをリセットすると、過剰な皮脂やスタイリング剤の残留を防ぐことができます。
こうした習慣には医学的な裏付けもあります。例えば頭皮マッサージを行うことで毛包周囲の血流量が増加し、毛母細胞の活性が高まることが報告されています。また、紫外線は毛包のDNAにダメージを与えることが知られており、頭皮の光老化は抜け毛や細毛の一因になります。さらに、鉄や亜鉛といった微量元素の不足は脱毛症との関連が多くの研究で指摘されており、バランスの取れた食生活や必要に応じたサプリメントの補給も欠かせません。
結局のところ、将来の毛量を決めるのは今の習慣です。顔のスキンケアと同じように、頭皮も毎日「清潔にする・守る・潤す」ことを意識すれば、10年後、20年後に大きな差となって現れます。髪のエイジングは避けられない部分もありますが、そのスピードを緩やかにすることが期待できます。
是非日々の生活に取り入れてみてください。