ピコスポットでタトゥーの除去はできる?色による波長の違い
ピコスポットでタトゥーの除去ができるのをご存じですか?
日本でもタトゥーをおしゃれで入れる方も増えてきました。また、眉のアートメイク(この場合にはピコトーニングを用いることが多いです)をされている方も多いのでしょうか。
デザインを変えたい、除去したいなど、修正を希望される方も増えていると思いますので、除去についてご案内したいと思います。
皮膚科専門医の葉山愛弥です。
ピコスポットといえば、シミやそばかすなどに用いられる美肌治療の印象が強いかもしれません。
しかし実は、ピコスポットはタトゥー除去にも非常に優れた効果を発揮する治療です。これまでタトゥーを消すには強力なレーザーを用いる必要があり、痛みや炎症、瘢痕リスクが高いことが課題でした。ピコスポットは、従来のナノ秒レーザーに比べて1000分の1秒という極めて短いパルス幅でインクを破砕するため、周囲の皮膚への熱ダメージを最小限に抑えながら色素を分解します。
ピコスポットによるタトゥー除去の最大の特長は、インク粒子をより微細に砕ける点にあります。これにより、体内のマクロファージ(異物を処理する免疫細胞)が効率的に色素を排出でき、回数を重ねるごとにタトゥーの色調が徐々に薄くなっていきます。黒色や濃紺など、カーボン系の色素は特に反応が良く、比較的少ない回数で除去が進む傾向にあります。
また、使用する波長が非常に重要です。ピコスポットは複数の波長を切り替えられる機種が多く、色素の種類に合わせて使い分けることで効率的な除去が可能になります。
1064nmは主に黒や濃い青に反応し、肌へのダメージが少なく深層の色素まで届くため、最も汎用的に使用されます。
532nmは赤やオレンジ、茶系のインクに対して高い効果を発揮しますが、浅い層に作用するため炎症性色素沈着に注意が必要です。
755nmは緑や青緑系のインクに反応が良く、これまで反応しにくかった寒色系のタトゥーにも対応できる点がメリットです。
このように、複数波長を組み合わせることで、カラフルなタトゥーでも均一に薄くしていくことが可能となります。
従来のQスイッチレーザーもタトゥー除去に用いられてきましたが、Qスイッチはナノ秒単位で照射するため、熱による組織ダメージがやや強く、治療後の炎症や瘢痕のリスクが問題となることがありました。
ピコスポットはより短いピコ秒パルスで衝撃波のようにインクを物理的に粉砕するため、熱影響を最小限に抑えながら高い破砕力を発揮します。これにより、治療回数の短縮や色素沈着のリスク軽減が期待できます。
https://biancaclinic.jp/treatment_category/skin-care/freckles/picospot/
必要施術回数
治療は1回で完全に消えるわけではなく、一般的には4〜10回程度の照射を要します。初回で全体的なトーンがやや薄くなり、3〜5回目で輪郭がぼやけ、7回目以降ではかなり目立たなくなるケースが多くみられます。インクの濃さや色調、入れ墨の深さ、部位によって必要回数は変わりますが、回を重ねるごとに徐々に自然な肌色へ近づいていきます。治療間隔は皮膚の回復を考慮し、6〜8週間程度あけるのが理想です。
照射後の経過
照射後は、一時的な赤みや軽いかさぶたが生じることがありますが、ピコスポットは熱ダメージが少ないためダウンタイムは比較的短く、炎症後の色素沈着も起こりにくいとされています。ただし、色素が完全に抜けると「白抜け」と呼ばれる色むらが一時的に現れることがあります。これは、皮膚のメラニンが一時的に反応して色素が抜けて見えるもので、多くは時間の経過とともに改善しますが、過度な出力や短期間での連続照射によってリスクが高まるため、経験のある医師による慎重な設定が重要です。
また、稀にタトゥーの深さや色素の性質によって、局所的な炎症や線維化が起こり、瘢痕のような質感変化を残すことがあります。特に古い機械やQスイッチで強い出力を重ねた既往がある部位では、皮膚の反応性が変わっていることもあるため、事前に小範囲でテスト照射を行うのが安全です。
治療後は紫外線を避け、保湿を丁寧に行うことが重要です。特に、色素が抜けた直後の皮膚は敏感な状態にあるため、日焼け止めや低刺激スキンケアを併用すると良いでしょう。
美容目的のピコスポットと同じ原理で、タトゥーという真皮にある色素にも対応できるのは、ピコレーザー技術の大きな進化といえます。
ピコスポットでのタトゥー除去のメリットまとめ
ピコスポットは、従来のレーザーに比べて圧倒的に短いパルス幅で照射できるため、タトゥー除去においても肌への負担が少なく、仕上がりの美しさに優れています。
黒や赤、緑など多様な色素に対応できる複数波長を備えており、カラフルなデザインにも柔軟に対応できます。熱ダメージが少ないことで瘢痕リスクを抑えつつ、より少ない回数で高い除去効果を期待できる点が最大の魅力です。
また、施術後の炎症や色素沈着が少ないため、これまでタトゥー除去をためらっていた方にも安心して受けていただける治療です。医師が皮膚の状態やインクの反応を見極めながら波長・出力を調整することで、より安全で確実な除去が可能となります。
ピコスポットは、「痛みやダウンタイムを最小限にしながら、確実に薄くしたい」という方に最も適した選択肢ですので、是非ご検討ください。