脱脂だけでクマは解決しない?⸻“ふくらみ”と“凹み”のバランス
こんにちは!
「自然な美を、信頼でデザインする。」
形成外科専門医の藤橋政尭です。

「クマ取りしたい」「クマをなくしたい」というご相談は非常に多く、クマ治療=クマ取り(脱脂)と考えている方も多い印象があります。
一般的に“クマ取り”というと、下まぶたの眼窩脂肪を取る手術=脱脂を指しますが、世の中では「クマ取り=クマが治る手術」というイメージだけが先行し、単純化されて一人歩きしているように感じます。
しかし実際には脱脂だけでクマが綺麗に改善するケースはごく少数です。
前回の記事でも触れたように、クマが目立つ原因は ふくらみと凹みの段差によって生まれる影 です。
膨らみだけを減らしても、凹みが残っていれば健康的な見た目にはなりません。
ここでは「なぜ脱脂だけでは不十分なのか」を分かりやすく整理していきます。

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■ 脱脂は“ふくらみ”にしかアプローチできない
脱脂とは、下まぶたのふくらみの原因である眼窩脂肪を減らす治療 です。

引用元:『顔の美容外科手術 第1版』(日本医事新報社 2021年) p.74 図1を一部改変して掲載
脂肪が多く突出している方では、脱脂によって下まぶたが軽くスッキリして見えるのは事実です。
ただし多くの方は同時に、tear trough(目頭側の凹み)、nasojugal〜mid-cheek groove(中央〜外側に続く凹み)といった「凹み」を膨らみの下に持っています。
クマが影として見える最大の理由は、この凹みでできる段差により、上から当たる光により影を落とす構造になっているから です。

脱脂だけ行い、この凹みだけが残ると、影が消えるどころか逆に凹みが際立ち、老けた印象になるリスクがあります。
そこで凹みが強い方の場合は、脂肪を取りすぎると凹みの印象が強くなるため、脱脂単体では控えめにしか脂肪が取れない、という制限も出てきます。
脱脂は再発もしやすい手術であるため、控えめの切除量だと数年後に再発するリスクが高まります。
つまり、多くの方は“凹みへのアプローチ”が必要になります。
クマ治療の本質は「どれだけ脂肪を取るか」ではなく、“段差(ふくらみ × 凹み)をどうならすか” がカギなのです。
ちなみに、脱脂だけで完璧に仕上げられるケースは少なく、脱脂だけで済むのは私の感覚では 10〜20人に1人ほどです。
しかし稀にいる凹みがあまりない方は脱脂のみでも十分に綺麗になります。
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■ 凹みに対する治療
影の原因である“凹み”に対する主な治療は以下の3つです。
① 脂肪注入
自身の脂肪を凹み部分に補い、tear trough〜mid-cheek をなだらかにつなげます。ヒアルロン酸と比較し溶けることはないため、長期的な安定感があります。
脂肪を細かく砕いたナノファットは皮膚の浅い層にも注入できるため、微調整が可能です。
② ヒアルロン酸注入
ダウンタイムが少なく腫れも少ない治療です。ただし皮膚の浅い層にヒアルロン酸を注入すると皮膚が青く透けてしまう(チンダル現象)ため、脂肪注入の方が微調整がしやすいです。
③ ハムラ法(脂肪移動術)
眼窩脂肪を取るのではなく、凹み側へ移動させて段差ごと解消する手術。
膨らみ+凹みの両方にアプローチでき、構造的にもっとも合理的な治療です。
ハムラ法については次回の記事で詳しく解説します。
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■ まとめ
クマの本質は、膨らみと凹みの立体差が光で強調されて見える影です。
脱脂はその中の「膨らみ」のみへの治療です。
凹みが残っている限り、影は消えずむしろ老けて見えることもあります。
だからこそ、クマ治療の中心は“段差をどうなくすか”が本質となります。
「クマ取り」ではなく、「クマ治療」についての知識を深めましょう。
あなたのクマにはどんな治療が必要なのか、診察でしっかり見極めながら最適な治療をご提案します。
お気軽にカウンセリングにお越しください。
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【プロフィール】
藤橋 政尭 (ふじはし まさたか)/形成外科専門医
形成外科専門医としての知識と技術を活かし、目元や鼻の手術、顔の脂肪吸引、糸リフト、ヒアルロン酸注入など、お顔全体の美容外科手術に幅広く対応。繊細なデザインが求められる切開手術や修正手術から、ダウンタイムの少ない注入施術・リフト系まで、患者様の理想に合わせた施術を心がけています。
自然な仕上がりとダウンタイムの最小化にこだわり、誠実なカウンセリングを通じて「任せてよかった」と思っていただける医療を追求しています。
「自然な美を、信頼でデザインする。」
そんな想いを大切に、日々の診療に取り組んでいます。
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【経歴】
2015年3月 昭和大学医学部医学科 卒業
2015年4月 昭和大学横浜市北部病院 初期臨床研修
2017年4月 昭和大学病院 形成外科
2017年10月 前橋赤十字病院 形成外科/美容外科
2019年4月 西尾市民病院 形成外科
2020年4月 昭和大学藤が丘病院 形成外科
2020年11月 太田西ノ内病院 形成外科/美容外科
2022年7月 東京労災病院 形成外科/美容外科 診療科長
2022年7月 R.O.clinic 非常勤、くさのたろうクリニック非常勤
2024年4月 銀座TAクリニック副院長
2025年11月 BIANCA CLINIC
【所属学会・資格】
日本形成外科学会 形成外科専門医
日本美容外科学会(JSAPS)会員
日本美容外科学会(JSAS)会員







