ディーププレーンフェイスリフト?ミッドフェイスリフト?術式の違いとは
【第二回】フェイスリフトっての術式って色々あるけど何が違うの?
みなさん、こんにちは!
自然で上品な若返りを提案する、形成外科専門医のありす先生です。
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前回の第一回では、たるみ治療の全体像と、
「どこまできたら切開リフトを考えるべき?」
というお話をさせていただきました。
たるみ治療の最終ライン──フェイスリフトを考える前に知ってほしいこと | 日本を代表する美容健康再生医療のクリニック|BIANCAGINZA
そして、みなさんから本当によくいただく質問のひとつがこれです。
「フェイスリフトの種類ってたくさんあるけど…何がどう違うの?」
フェイスリフトは、技術ある多くのドクターが経験と根拠に基づいたアレンジを加えていることも多いため、他の医師や患者様が細かい工程のすべてを知ることは正直難しいと思います。
ですが色んな名前の術式があって一見難しいように思われるフェイスリフトも、根本的な構造とよく使われる単語の意味を知っていれば恐るるなかれ。
例えば自分が医師から勧められている術式がどんな仕組みなのか、ざっくりと理解することができるはずです!
わかりやすくご紹介していこうと思うので、ぜひこの記事を最後まで読んでみてください✨
■ 診察室での、ある日の会話
カウンセリングに来られた40代後半の患者さま。
「先生、私そろそろフェイスリフトかなって思ってるんですけど…どれを選べばいいんでしょう?」
と、少し不安そうにスマホのメモを見せてくださいました。
そのメモには
“SMAS? ディーププレーン? ミニリフト? 何が違うの?”
と書かれていました。
こういう方、本当に多いんです。
なので私はいつもこうお答えしています。

■ 顔は“層”でできている。違いはシンプルに「どの層を動かすか」
私が診察室でよく描くのが、お顔の層構造のイメージ。
上から順に
1.皮膚
2.表面の脂肪(浅い脂肪)
3.SMAS
4.深い脂肪と表情筋
5.Deep Plane(SMASの深層)
6.骨膜・筋膜
7.骨
たるみは皮膚だけの問題ではなく、
SMASやそのさらに下の深い層が落ちてくることで起こります。
だから術式が分かれる理由は実はとてもシンプルで、どの層をどれだけ持ち上げるかなんです。
難しそうに聞こえますが、本質はこれです。
この7層をもう少し具体的に見ていきましょう。
1. 皮膚
もっとも外側。
真皮のコラーゲン・弾性線維が減ることで表面的なたるみが発生する層です。
2. 浅部脂肪(Subcutaneous Fat)
皮膚のすぐ下の脂肪層。
部位ごとに分かれているます(例:メーラーファット、ジョウルファットなど)。
フェイスリフトの表層剥離はこの層で行われます。
3. SMAS(Superficial Musculoaponeurotic System)
表情筋・靭帯・脂肪を一体的につなぐ膜状構造。
SMASの処理によって、下顔面の輪郭がもっとも変化します。
SMASはここでは“表層の筋膜”として分類されます。
4.深部脂肪 (Deep Fat Compartments) と 表情筋(Mimetic Muscles)
SMASの深層に位置する脂肪群(deep medial cheek fat・SOOF など)と表情筋。
ここが下垂すると、ミッドフェイスの凹み・ほうれい線が目立ちやすくなります。
5. Deep Plane(深在性SMAS:Deep Fascia / Deep SMAS)
Deep Planeリフトが進入する層。
SMASの深層にある疎性結合組織で、 リガメント・深部脂肪・表情筋を“ブロックとして”動かせる層です。
Deep Planeアプローチはここを大きく剥離して処理します。
6. 骨膜(Periosteum) ・咬筋筋膜( Parotidomasseteric Fascia)
部位によって名称が変わります。
・頬骨周囲:骨膜(periosteum)
・下顎角〜咬筋部:咬筋筋膜(PM fascia)
フェイスリフトの剥離は通常この層まで降りませんが、
ミッドフェイスリフトやSOOFのサスペンションではこの層に触れることがあります。
7. 骨
もっとも深い層。
直接触ることはありませんが、フェイスリフトの“固定点”は骨膜上に設けることが多いです。
◆フェイスリフトを理解するうえで知っておきたい「大事な単語」
なんとなく層構造のイメージはついたでしょうか?
それでもまだ難しいよという方に、施術内容を理解するうえで大切なワードをいくつかピックアップして、上記の一部に加えて少し解説を加えたいと思います。
●SMAS(スマス)ってなに?
フェイスリフトを調べたら必ずといっていいほど目に入ってくるSMASというのは “皮膚の下で顔の輪郭を支えている筋膜層” のことです。
もっと簡単に言うと、
顔の土台になる「補強シート」 のようなもの。
若い頃はこのシートがピシッと張っていて、
頬の位置も耳の前のラインもスッとしています。
けれど、年齢とともにこのシートが緩んだり、下方向へずれていくと、
ほうれい線やマリオネットラインにつながっていきます。
フェイスリフトでは、このSMASを“正しい位置に戻す”ことで、
皮膚だけを引っ張らない、自然で長持ちする仕上がりになります。
●Retaining ligament(リテイニング・リガメント)
これも、私たちが手術のとき必ず意識する大事な構造で、
顔の皮膚と深い組織を「柱のように固定している靭帯」のことです。
お顔にはいくつものリガメントがあって、
例えば“頬の位置が落ちる”“口元がもたつく”といった現象は、これにより強調されます。
手術中には、この靭帯を適切に処理していくことで
「土台からのリフト」が可能になり、
表面だけ持ち上げるような不自然さを避けられます。
●Midface(ミッドフェイス)
ミッドフェイスは、
目の下〜頬の中央あたりの“顔の中段ゾーン” のこと。
ここが下がると一気に疲れて見えるので、
糸リフトだけでは足りなくなることが多い領域です。
●Deep plane(ディーププレーン)
これは「層の名前」です。
SMASよりさらに深い層、
頬の靭帯の奥にある“ボリュームの本体”に近い層と覚えておくとわかりやすいです。
この層に直接アプローチするのが「ディーププレーンリフト」で、
頬の丸みごと位置を戻せるため、
立体的で若々しい輪郭を作りやすいのが特徴です。

どうでしょうか?
層構造に加えてこれらの単語の意味がわかるだけで、なんとなくフェイスリフトの名前から術式のイメージができそうな気がしませんか?
■ SMASリフト──“王道のフェイスリフト”
● 操作する層
→ SMAS層(皮下脂肪の下)
ここをしっかり持ち上げることで、
- フェイスラインが自然に整う
- マリオネットラインや口横のもたつきが改善
- 「やりすぎ感のない若返り」になる
という特徴があります。
実際、先ほど挙げた患者さまも鏡を見ながら、
「この辺りが特に気になるんです…!」とフェイスラインを指していました。
そんな方には、SMASリフトはとても相性が良いんです。
■ ディーププレーンリフト──“立体ごと若い頃の位置に戻す”手術
次にディーププレーンリフト。
名前の印象だけで「SMASより強い?」と思う方が多いのですが、実際には…
● 操作する層
→ SMASよりさらに深い層(deep plane)
皮膚・脂肪・SMASを“一塊で保持したまま”持ち上げるため、
中顔面(頬中央)までしっかり立体的にリフトできます。
- ゴルゴライン
- 法令線の深い影
- 頬のボリューム位置の低下
こうした悩みが強い方には、効果が分かりやすい方法です。
ただし、ダウンタイムも強く、技術差が出やすい手術でもあります。
他にも…
■ ミニリフト
・浅い層だけ扱う
・軽度のたるみに
・ダウンタイム短め
■ミッドフェイスリフト
・中顔面に特化
・下まぶた側からアプローチ
・他の施術と組み合わせることが多い
などがあります。
■ 結局「どれが一番いいですか?」
術式のことはなんとなくわかった。じゃあ自分に合う術式はどれなの?という疑問が浮かぶのはもっともです。
答えは、“あなたが何を改善したいか”で決まります。
鏡を見て気になるのは
・フェイスライン?
・中顔面?
・ボリューム?
・影?
あなたのたるみ方のタイプ、希望する仕上がり、許容できるダウンタイムや傷…
それによって選ぶべき術式は全然違うんです。
さらに言えば、本当にフェイスリフトが必要かどうかも改めて考えてみることが大切だと思います。
■ 今日のまとめ:
術式が色々あると迷ってしまうけれど、
大事なのは名前ではなく
・どの層がどれだけ下がっているか
・どのような仕上がりを望むのか
・自然さ? 立体感? ボリューム?
これらに合わせて、
“あなたの顔に最適な手術”を考えることです。
私は診察室で、
「あなたにこの術式が合う理由」を鏡で確認しながら丁寧に説明するようにしています。
これは、美容医療においてまず何よりも大切なプロセスだと感じているからです。
今回の記事が、少しでも皆さんがフェイスリフトのことを理解する手助けになれればと思います。
次回の第三回では、
「じゃあ実際、費用は? リスクは? ダウンタイムは?」
など、みなさんが一番気になる部分をお話ししていこうと思います!
楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

執筆者:幡手 亜梨子(はたで ありす)
形成外科専門医/美容外科医
九州大学医学部卒業後、大学病院や関連施設で形成外科・美容外科の診療に従事し形成外科専門医を取得。
顔面・体幹の再建手術から美容外科領域まで幅広い症例を経験し、解剖学的知識に基づいた自然で美しい仕上がりを大切にしています。
学生時代にはアイドルとして活動していた経験もあり、“見られる美しさ”と“医療としての美しさ”の両面を理解する立場から、患者様一人ひとりに合わせたオーダーメイドな美容医療を提案できるのが強み。
プライベートでは旅行とグルメが好きで、美容やライフスタイルに関する情報をInstagramで発信中。
経歴
九州大学医学部医学科 卒業
新東京病院 初期研修
自治医科大学附属病院 形成外科 勤務
ルーチェクリニック 勤務
新小山市民病院 形成外科 勤務
帝京大学医学部附属病院 形成外科 勤務
JR東京総合病院 美容外科・形成外科 勤務
有明ひふかクリニック 勤務
所属学会・資格
日本形成外科学会 専門医
専門分野
美容外科手術(目元・フェイスライン・婦人科形成など)
注入治療(ヒアルロン酸、ボトックス、脂肪注入)
レーザー・スキン治療
再生医療・エイジングケア







