コラム
2026.10.14
傷痕修正とは?外科手術の方法や効果、メリット・デメリットを解説
中顔面・傷跡修正のスペシャリスト。形成外科医として傷跡治療、眼瞼下垂症、皮膚癌の手術に携わりながら、美容外科医としても研鑽を積んできました。重視しているのは、局所だけにとらわれず、顔全体の調和を踏まえたエイジングケアを提供することです。加齢で失われるボリュームにはヒアルロン酸や脂肪を適切に用い、可能な限り脂肪を再利用しながら本来の膨らみや丸みを自然に取り戻します。また、傷をできるだけ目立ちにくく整える傷跡修正にも注力しています。

昔のケガや手術の傷痕が、何年経っても気になる。
もう治らないものだと思っていても、外科手術によって目立ち方を変えられるケースがあります。
ただ、傷痕を取り除いて縫い直せば、きれいになるという単純な話ではありません。
傷痕ができた場所や皮膚の状態によって、手術の方法も変わってきます。
今回は、BIANCA CLINIC(ビアンカクリニック)の日本形成外科学会認定 形成外科専門医・魚谷雄一朗が、傷痕修正で用いる外科手術の方法や期待できる効果についてお話しします。
傷痕修正とはどのような施術ですか?
外科的な傷痕修正では、皮膚に残った傷痕(瘢痕)を切除したり、周囲の皮膚を移動させたりして、見た目やひきつれの改善を目指します。
対象となるのは、ケガや手術後の傷痕、やけどの痕など。幅が広がっているものもあれば、皮膚が凹んでいたり、周囲を引っ張っていたりするものもあります。
患者さまにまずお伝えしたいのは、手術をしても傷痕を完全に消せるわけではないということです。
傷痕を切除すれば、そこには新しい切開線ができます。その新しい傷痕を、どのように目立ちにくく整えるか。
これが外科的な傷痕修正の基本的な考え方です。
傷痕の目立ち方には皮膚のシワや緊張も関係する
傷痕は、必ずしも大きいものほど目立つとは限りません。
例えば、皮膚のシワに沿った傷痕は周囲になじみやすく、反対にシワを横切るような傷痕は目につきやすい傾向があります。
もう1つ考えたいのが、皮膚にかかる力です。
皮膚が強く引っ張られる場所では、せっかく細く縫い直しても、治る過程で傷痕が広がってしまうことがあります。
傷痕の長さや幅だけを見て手術を決められないのは、こうした理由があるからです。
傷痕修正の外科手術にはどのような方法がありますか?
傷痕修正には、単純切除、分割切除、Z形成術、W形成術など、さまざまな外科手術があります。

どの術式を選ぶかは、傷痕の幅や向き、周囲の皮膚の余裕、ひきつれの有無などによって変わります。
ここでは主な方法を紹介します。
単純切除|傷痕を切除して細く縫い直す
単純切除は、傷痕を細長い楕円形に切除し、周囲の皮膚を縫い合わせる方法です。
幅の広がった線状の傷痕などに用いられます。
この手術で重要なのが、縫い合わせる際の工夫です。
皮膚の表面だけを縫い合わせると、傷口に負担がかかります。
そのため、深い層から縫合して傷口を支え、表面にかかる緊張をできるだけ分散させます。
ただ、どんな傷痕でも細く縫い直せるわけではありません。
周囲の皮膚に余裕がないのに無理に引き寄せると、傷痕が再び広がったり、周囲の形が変わったりする可能性があります。どこまで切除できるかは、皮膚の状態を見ながら判断します。
分割切除|広い傷痕を段階的に小さくする
傷痕が広く、一度に切除するのが難しい場合には、手術を複数回に分けることがあります。
これが分割切除です。
最初の手術で切除できる部分を取り除き、残った傷痕は、皮膚の緊張が落ち着いてから次の手術で修正します。
一度に無理な力をかけずに済む一方、複数回の手術と回復期間が必要になります。
Z形成術|傷痕の方向を変えてひきつれを緩める
Z形成術では、傷痕を中心にZ字状の切開を加え、三角形に作った皮膚を入れ替えます。
この方法が役立つのは、傷痕の向きを変えたいときや、皮膚のひきつれを緩めたいときです。
例えば、口元や目元の傷痕が縮み、皮膚が引っ張られて動かしにくくなっている場合。
こうした状態を「瘢痕拘縮」といい、Z形成術によって緊張を緩和できることがあります。
また、直線状の傷痕を分断し、周囲のシワになじみやすい方向へ変える目的でも用いられます。
新たな切開線が加わるため、傷痕全体の長さは元より長くなる場合もありますが、単純に短くすることだけが目的ではないのです。
W形成術|直線状の傷痕をジグザグに整える
W形成術は、直線状の傷痕を細かなジグザグ状に切除・縫合する方法です。
なぜ、わざわざジグザグにするのでしょうか。
直線状の傷痕は、周囲の皮膚のシワと方向が異なると、一本の線として目につきやすくなることがあります。
そこで細かく方向を変え、直線として認識されにくくすることで、周囲の皮膚になじませることを目指します。
もちろん、ジグザグにすれば必ず目立たなくなるわけではありません。
切開線が増えることも踏まえ、傷痕の位置や皮膚の状態から適応を判断します。
傷痕修正の外科手術で期待できる効果は?
外科手術で目指せる変化は、傷痕を細くすることだけではありません。
凹みや段差を整えたり、皮膚のひきつれを緩めたりと、傷痕の状態によって目的が異なります。
幅の広い傷痕や凹み・段差を整える
幅広く残った傷痕は、切除して縫い直すことで細い線状に整えられる場合があります。
ただし、凹んだ傷痕は少し事情が異なります。皮膚の深い部分で組織が癒着し、表面が内側に引き込まれていることがあるためです。
その場合、表面の傷痕だけを切除しても十分ではなく、癒着の解除や深部組織の調整が必要になることもあります。
傷痕の方向を変えて目立ちにくくする
皮膚の自然なシワと異なる方向にある傷痕は、向きを変えることで周囲になじみやすくなる可能性があります。
傷痕を短くすることが、必ずしも良い結果につながるとは限りません。
新しい切開線をどの位置に置くかも、仕上がりに関わるポイントです。
皮膚のひきつれを改善する
傷痕が硬く縮むと、周囲の皮膚が引っ張られ、動きにくくなることがあります。
こうした瘢痕拘縮には、Z形成術などで皮膚の緊張を緩める方法が選択肢になります。
見た目の変化に加え、つっぱり感や動かしにくさの改善を目指せることも、外科手術の役割です。
傷痕修正は外科手術以外にも方法がある?
傷痕が気になるからといって、必ずしも切除する必要はありません。
赤みが目立つ場合には血管を対象とするレーザー、表面の凹凸にはフラクショナルレーザーなどが選択肢になることがあります。
盛り上がった傷痕であれば、ステロイド注射や外用薬、テープによる治療を検討する場合も。とくにケロイドや肥厚性瘢痕は、手術によって再発・悪化する可能性があるため、慎重な判断が必要です。
色が気になるのか、形を整えたいのか。それによって適したアプローチは変わってきます。
傷痕修正のメリット・デメリットは?
外科手術では傷痕の形や周囲の組織を直接調整できますが、その一方で新しい傷痕が残ります。
どこまで変化を目指せるのか、リスクとあわせて知っておくことが大切です。
メリット|傷痕の状態に応じて修正方法を選べる
外科手術の利点は、皮膚の表面だけでなく、深い部分の癒着やひきつれにも対応できる場合があることです。
単純切除で整えられる傷痕もあれば、Z形成術やW形成術などが適しているケースもあります。
私が手術を考える際に大切にしているのは、今ある傷痕だけを見ないこと。
周囲の皮膚にどれだけ余裕があり、術後にどの方向へ力がかかるのかまで確認します。
切除したあとに何が起こるかを想定しておくことが、傷痕修正では欠かせません。
デメリット|新たな傷痕が残り、再び目立つ可能性もある
手術後は赤みや腫れ、内出血、痛みなどが生じることがあります。
感染、色素沈着、創部離開、傷痕の盛り上がりにも注意が必要です。
腫れ・赤み・内出血は1〜2週間程度、抜糸は約1週間後が目安。
ただし、傷痕の赤みや硬さが落ち着くまでには、数ヶ月以上かかることもあります。
また、皮膚の緊張や体質によっては、修正後の傷痕が再び広がる可能性も否定できません。
手術で期待できる変化だけでなく、こうした限界も事前にお伝えしています。
傷痕修正に関するよくある質問
傷痕修正について、患者さまからよくいただく質問にお答えします。

Q. 傷痕修正で傷痕は完全に消えますか?
A. 完全に消すことはできません。外科手術では新たな傷痕が残りますが、その形や方向を整え、目立ちにくくすることを目指します。
Q. 何年も前の傷痕でも修正できますか?
A. 古い傷痕でも手術できる場合があります。傷痕の範囲や周囲の皮膚の状態を確認したうえで判断します。
Q. Z形成術とW形成術はどちらが良いですか?
A. 目的によって異なります。Z形成術は傷痕の方向転換やひきつれの改善、W形成術は直線状の傷痕を目立ちにくくするために用いられます。
Q. 傷痕修正後に再び傷痕が広がることはありますか?
A. あります。とくに皮膚に強い力がかかる部位では、再び広がる可能性があるため、術後の傷口の保護も大切です。
Q. 傷痕修正の施術を受けるタイミングは?
A. 一般的には傷痕が成熟するのを待ちます。ただし、ひきつれによって動きが制限されている場合などは、早期に対応することもあります。
傷痕修正で目指す自然な仕上がり
傷痕修正は、ただ傷痕を取り除く手術ではありません。
新しい切開線をどこに置き、周囲の皮膚とどうなじませるか。
形成外科医として、私はその点を大切にしています。
BIANCA CLINICでは、傷痕の形や深さ、皮膚の状態を確認し、外科的な修正が適しているかどうかも含めてご提案します。
長年気になっていた傷痕も、修正の選択肢があるかもしれません。
まずは現在の状態を確認するところから、一緒に考えていきましょう。